巻柏の苔取り

  樹木のように立ち上がった株立ちの巻柏は盆栽のような姿となり、見る者に年月の経過を想起させます。幹のように見える部分は根の集合体です。よく見ると繊維状の構造をしており、触ってみるとがっしりと堅いことが分かるでしょう。
  長年世話をしていると、この根塊が緑の苔に覆われることがあります。この苔に風情を感じる向きもありますが、芽の芯(中心の成長部分)に苔が入り込むと巻 柏の成長が鈍り、放置しすぎると外見上も見苦しくなってきます。一度芯に苔が入り込むとやっかいで、巻柏の成長が鈍ってきます。葉の詰まった品種の芽が苔に覆われてしまい、 ピンセットで一本一本取り除いたという苦労話も耳にします。
 今回は株立ちの巻柏の苔取りについてご紹介いたします。

① 数十年は経過していると思われる株立ちの「玉獅子」。根塊である幹の部分は苔に覆われています。

② 霧を吹いて苔に水分を含ませ、剥がしやすくします。

③ 金属製のヘラで縦方向になぞるように苔をそぎ落とします(実演者の方によると、ヘラの縁が傷んでくるのでたまに金属やすりでこすって鋭利にしているとのことでした)。②と③を繰り返します。

④ 苔を取り除いた後の状態。ついでに古い枯れた葉も取り除きます。

⑤ 苔を取り除いた株を鉢から抜き、新しい土と肥料を用いて植え替えます。苔取りおよび植え替えの済んだ株は、養生のために暫く中日~弱日で様子をみると良いでしょう。

⑥ 今回紹介した金属製のヘラの他に、ワイヤブラシ、ナイロンブラシ(写真)、あるいは歯ブラシも便利な道具として利用可能です。注意点は根の方向に沿ってなぞるように苔を取ることです。強くやりすぎると根を傷めるので力の加減が必要です。

⑦ これは東京都知事賞受賞歴のある会員が自作されたジェット噴射ノズルです。ホースにつなげて、細く強い水流で古葉や苔を取り除くことが可能です。重宝しているという声が寄せられました。

 やっかいな苔の存在は古くから巻柏愛好家の頭を悩ませて来た悩みの一つと思います。皆様の工夫や新しいアイデアが届きましたら、またご紹介したいと思います。


● 植え替え実技・協力: 鈴木(喜)氏 (栃木支部)